開催の概要
2019年11月1日(金曜)に「サイトワールド2019」のイベントとして、「NVDA相談会」を開催しました。本記事は NVDA 日本語チームの西本による開催報告です。公開に時間がかかってしまったことをお詫びします。
2時間30分のイベントで、約100人にご来場いただきました。
予想を上回る大盛況となり、時間帯によっては座席が不足して、立ち見になったり、入場をあきらめたかたもおられたようです。準備不足で申し訳ありませんでした。
登壇者としては、西本が NVDA 日本語チームとしての報告などを担当しました。準備した資料は以下の内容です。
司会進行役の辻さん(コンセント)には、NVDA 日本語チームのイベント運営スタッフとしての立場で、企画からご参加いただきました。
アクセシビリティに積極的なクラウドサービス事業会社の代表として、サイボウズの小林さん、弁護士ドットコムの太田さん、Chatworkの守谷さん、freee の伊原さん、以上の方々にもご登壇いただき、また来場者との意見交換をしていただきました。
NVDA 日本語版の説明とインストールができる CD 2枚組を30セット配布しました。今回のイベントの録音と合わせて、配布したCDのデータを後日公開する予定です。申し訳ありませんが、もうすこしお待ちください。
今回のサイトワールドのイベントの終了後に、日本視覚障害者 ICT ネットワークの
ポッドキャストの取材を受けました。コンテンツが公開されたらあらためてご紹介します。
アンケートのご報告
今回のイベントに先立って、より多くの企業や組織で、業務のためにNVDAをお使いいただくための取り組みのきっかけとするために、業務での NVDA とクラウドサービスのご利用に関するアンケートを行いました。
集計結果を簡単にご報告します。
NVDAの導入実績
「業務でNVDAを使っている場合に、NVDAの導入実績としてご所属の会社名・組織名を公開させていただくことは可能でしょうか?」という質問に、ご回答いただけたのは以下のご所属名です。ありがとうございます。
- 株式会社コンセント
- 一般財団法人計量計画研究所
- サイボウズ株式会社
- SAWADA STANDARD DESIGN
- 有限会社時代工房
- 合同会社 MICHISIRUBE FUKU
- 社会福祉法人千葉県視覚障害者福祉協会
- ジョブサポートパワー株式会社
- freee株式会社
- 株式会社ディーゼロ
- シンプレックス株式会社
- 株式会社トゥーアール
回答者の属性
回答者の属性についてのご回答は以下の通りでした。
- 視覚障害をお持ちですか:ある 28人(72%)/ ない 11人(28%)
- ご所属の分類:「官公庁・公的機関」4人(11%)/「民間の非営利機関」3人(9%)/「一般企業・その他」28人(80%)
業務での利用
業務でのご利用状況のご回答は以下の通りでした。
- 使っている:30人(76%)
- 使っていない:9人(24%)
使っている目的
- 支援技術のユーザーとして:22人
- アクセシビリティ検証のため:15人
業務で使用を認められているか
「業務でNVDAを使いたかったが、認められなかった、という経験がありますか」という質問へのご回答は以下の通りでした。
- ある:4人(10%)
- ない:35人(90%)
考察
今回は短期間かつ小規模の実施となりましたが、業務でのNVDAの導入実績をご紹介できたことをうれしく思います。業務での使用が認められている企業・団体もたくさんあること、一方でお困りの方がいらっしゃるということも確認できました。
NVDAユーザーからのご相談
アンケートの自由記述でいただいたご質問の一部に、会場でお答えしました。以下はその内容のご紹介です。
ひらがなとカタカナの区別? サ行とタ行「ジ」と「ヂ」の区別?
以下の機能や設定をお試しください。
現在の行の読み上げ
- NVDA+上矢印 (デスクトップ配列)/ NVDA+L (ラップトップ配列)
- 3回押すと文字説明で行を報告
NVDAメニュー > 設定 > 日本語設定
- かな文字をフォネティック読み
- カタカナのピッチ変更率
Microsoft Word での表の操作
Microsoft Word で
- 表の中のカーソルの位置情報を知るには?
- 表の中で列単位でカーソルを移動するには?
というご質問がありました。以下の機能や設定をご紹介しました。
- レビューカーソルの位置情報の報告:NVDA+(テンキー)Delete
- テーブル内の移動:Ctrl+Alt+矢印キー
- 書式とドキュメント情報 > セル番地
Microsoft Excel や Word でカーソル位置のセルと同じ行や列の見出し項目を読み上げるには?
「行見出しの設定・列見出しの設定」を使うと行や列の見出しが自動読み上げされます。
- NVDA+Shift+C 行
- NVDA+Shift+R 列
- 1回押すと現在の位置を見出しとして設定
- 2回押すと設定をクリア
ウイルス対策ソフトの操作ができない
Windows 10 文字認識が使える場合がある、という情報をお伝えしました。
- 現在のナビゲーターオブジェクトの画像を認識: NVDA+R
まとめと今後
今回のイベントは前半で NVDA の利用状況のご報告とノウハウのご紹介をしました。NVDA日本語チームは2012年からイベントを開催してきましたが、多くの人にお使いいただけるようになった今こそ、初心者の方々にていねいにNVDAのご紹介をしていく必要があるとあらためて感じました。
イベントの後半ではクラウドサービスとNVDAについての議論が活発に行われました。実際にクラウドサービス事業者の方々によって、アクセシビリティを配慮した改善が進められていること、そのためのツールとしてNVDAが選ばれている、ということが共有されたと感じます。
NVDA日本語チームはいろいろな立場の皆様と、もっと上手に協力して、NVDAの普及、そしてアクセシブルなコンテンツやサービスが広まることを目指していく必要があると認識しました。
NVDA は現在 2019.3 というバージョンの開発が進められています。従来のリリーススケジュールから外れた、この長い開発期間は、NVDA の心臓部分である Python というプログラミング言語のバージョン移行に伴うものです。もしかすると2019年に間に合わないのかも知れませんが、2019.3 が無事にリリースされれば、技術的に困難な課題をひとつクリアできることになります。一方で、大きな改良も盛りだくさんのリリースとなりますので、楽しみにしていただければと思います。
NVDA 日本語チームは、現在「運営規約の改定」の投票 を行っています。この規約改定は、新しい活動を積極的に行っていくための体制を作る第一歩と考えています。今後ともよろしくお願いします。